スキル全盛の時代である。 人材採用の現場では、スキルばかりが重視される。巨大人材紹介会社ではスキルを数値化、データベース化することで、マッチングの“効率化”に励んでいる。人材の側も資格の習得に熱心だ。 私は人材紹介事業を開始するに当たりまず考えたことは、人材のどこを最も重視すべきかということだった。そして出した結論は、スキルよりもモチベーションの部分であるということだった。 かつて金融機関が人を見ずに土地などの担保のみを見て融資した結果、担保価値が下がって現在のような巨額の不良債権が発生している。この担保とスキルが同じような位置付けにあるのではないかと考えている。つまり、スキルというものも将来陳腐化する可能性を否定できず、そこだけを見て人材を採用してしまうと、将来不良債権化してしまう可能性もあるのではというわけである。 本当に自分のやりたいことをやっている人間というものは、いま持っていないスキルでも、必要とあらばすぐに習得するだけの勢いはあると思うし、なければないでそれをカバーする方法を必死で考え出そうとする。逆にいくらスキルがあっても、やりたいことをやっていない人間というのは下手をするとその能力の半分も出せていないケースが多々あると思う。 人材紹介会社のほとんどが、どちらかというとスキルに重点を置き、求人企業側もスキルばかりを強調していることに、危惧を感じている。