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執筆者の写真Akio Sashima

第15回 見抜く


かつて秘書をしていたころの話。 最高裁判所の裏手にあるビルの一室で、初老の男2人が話していた。 私はそのそばにちょこんと座って話を聞いていた。 そこで話されていた内容は言えない。 ただ私は、一方が話している内容が「はったり」であることを知っていた。 ほとんど詐欺のような話である。 にもかかわらず、聞いているうちに、「もしかして本当のことを話してるのか?」と思ってしまった。それほど話し方が上手いのである。 はったりであると知っている私がそうなのだから、知らずに聞いているほうは何の疑いも持たずに信じ込んでしまうだろう。 世の中には恐ろしい能力を持っている人がいる。 うまく使えば表の世界でも大成功を収めることが出来るだろう。 しかし彼らはそんなことに面白みを感じないらしい。 最近、私のところに間抜けな電話がかかってくる。 同業者の探りなのか、単なる冷やかしなのか。 どちらにしろ、私には声の調子で「普通と違う」のがわかる。 だてに場数を踏んではいない。 世の中には恐ろしい能力を持っている人がいる。 そして、間抜けな人間もたくさんいる。 それを見抜ける人間にならないと、成功はおぼつかないと思う。

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