「若いときの苦労は買ってでもしろ」という言葉がある。 その本質的な意味には100%同意するが、あえて言葉尻を捉えるというか、 屁理屈を言わせて貰うと、買ってする苦労なんてたかが知れている。 もともと買えるものには限界があるからだ。 例えば、お化け屋敷。 怖いとわかっているところに、お金を払って入る。 だから本気で怖くはならない。 ジェットコースターも同じ。 無事に降りることが出来るという前提だから、怖いけど安心感がある。 でも、家でじっとしていたら、あの刺激は得られない。 ぬるま湯に浸かっているよりは、よほどいい。 そして、敢えてそういうものに挑むことで、本当の怖さを体験するチャンスも増える。 小学生の頃、遠足か何かで、遊園地みたいなところに行ったことがある。 班行動で男子3人、女子3人。 そして「マジックハウス」とか何とかいうものに乗った。 部屋の両側に椅子があって、ブランコ程度に前後に揺れるが、 周りの壁がグルングルン回るから、まるで自分達も部屋ごと回っている感覚になるというもの。 最初は面白いけど、すぐに飽きる。 そしてちょうどいい感じの時間で終わった。 「しょうもないな」と白けながら、安全ベルトをはずそうと手を伸ばしたとき 外から係のおばちゃんの焦った声がした。 「あれ、ちょっと待ってね。あれー。」 そしてマジックハウスは再び回り始めた。 どういうわけか、止めることができなかったらしい。 はっきり言って、こんなもの、2回も連続で乗るようなものではない。 だんだん気持ち悪くなってくる。 でも途中で止められないらしく、外から「もう少しだからー」と 申し訳なさそうな声がする。 そしてやっと止まった。 「あーあ、気持ち悪かった」 と思っていると、再びおばちゃんの焦った声と、ガチャンガチャンという音。 「あれー、だめだね。あれー、どうしよう。」 まさか! なんとまた回り始めた。 さすがに冗談ではない。 女子は叫び始めた。 「気持ち悪ーい、止めてー。」 男子も叫び始めた。 「死ぬー!」 冷静に考えればブランコ程度にしか揺れてないんだから目を閉じればそんなに怖くもないはずだが、 すでに目は周りのグルングルン回転する壁に慣れてしまっているから、目を閉じても気持ち悪さは変わらない。 そして外から聞こえてくるおばちゃんの頼りなさげな声と相まって 気持ち悪さがだんだんと恐怖に変わってきた。 「このまま回り続けたらマジで死ぬんじゃないか・・・」 そして3度目の回転が終わり、今度はちゃんと止まった。 「ごめんねー。大丈夫ー?」 田舎の遊園地だから、おばちゃんも、のん気なもの。 こっちもまだ小学生だから「金返せ!」とも言わず そのままその事件は終わった。 こういうのはお金では買えない。 というか、別に買いたくもない。 苦労だって同じ。 「もう二度と経験したくない」というようなことが本当の苦労のはず。 そんなもの買えるものではない。 だから最初に戻ると、「若いときの苦労は買ってでもしろ」という言葉は 「若いときは何にでも挑戦しろ!アクションを起こせ!」と言い換えたほうがいい。 そうすれば苦労は勝手についてくる。 苦労は「おまけ」と同じで、買うものではないのだから。
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Life is about the people you meet, and the things you create with them.
Recruiter / Japan Market Entry Consultant
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