Akio Sashima
第86回 目的を明確化せよ!
2003年冬。ニューヨーク。 肌に突き刺すような寒風の中、俺と友人の2人は場末のダイナーの立ち寄った。 ドアを開け入った瞬間、先客たちの好奇の眼差しが一斉に俺たちに集まる。 どうやらアジア人はあまり利用しないところらしい。 目を泳がせたウェイトレスが俺たちを席に案内する。 しかし俺はその席を断り、一番奥で入り口が良く見渡せる席を要望した。 そして壁を背にして座る。 こうしておけば強盗が入ってきても、すぐに対応できるからだ。 ・・・というのは嘘で、実際は行ったのは普通のダイナー。 派手なメイクのおばちゃんウェイトレスが「ハイ!ハニー、注文は?」と陽気に声をかけてくるようなところ。 でも一番奥の席に座ったのは事実。 ただ単にそこしか空いていなかっただけだけど・・・。 その席で分厚いハムステーキを食べながら、友人とこんな会話をしていた。 「ゴルゴ13は絶対この席に座るよな。いつテロリストが乱入してきてもいいように・・・。」 「はは、アホか。」 そのとき! いきなり斜め後ろの壁が動いて、人が入ってきた。 そんなところに出入り口があるなんて気づいていなかったから、びっくり。 もともとカーテンか何かで覆われていたし・・・。 でも友人が一言。 「いまのが強盗だったら、お前が一番最初にやられるじゃん・・・。」 ゴルゴは確かにこう言っている。 「私は常に入り口が見渡せる一番奥の席にしか座らない」 でもそれは、斜め後ろに出入り口がある場合は話が別だ。 そんなの当たり前。 でも、これと似たような話は意外と多い。 それを引き起こすのは、一つの決まりがあると、 それさえ実行すれば万事OKと考えてしまうマニュアル思考だ。 それはすなわち、頭を使っていない証拠でもある。 ゴルゴの行動は、乱入者が入ってきてもすぐに察知することを目的としている。 別に一番奥の席に座ることが目的ではない。 そんなこと頭を使って考えればアホでもわかる。 だから入り口以外に、進入口がないかどうかを冷静かつ慎重にチェックするはずである。 目的は何なのか? それを常によく考えて行動しないと、何をやっても上手くいかない。