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第103回 すべては志から

執筆者の写真: Akio SashimaAkio Sashima

ウェルダンのステーキを注文すると、残り物を出される恐れがある・・・。 月曜日に魚料理を注文すると、古い魚を出される恐れがある・・・。 スペシャル料理とか「本日のお薦め」とかを注文すると、売れ残りを出される恐れがある・・・。 どれも「なるほど」と思ってしまう。 レストランもビジネスだから。 でも、そんなことをしているレストランは長持ちするはずがない。 料理に対する志は、必ずどこかに現れる。 食通ではなくても、客はバカではない。 先日NHKを見ていたら、日本料理の海外進出特集をやっていた。 そこには二つの考え方があった。 一つは、ロバート・デニーロが気に入ってパートナーにまでなった有名店「ノブ」の考え方。 和食に色んなアレンジを加えて、日本人から「あれは和食ではない」と言われる。 でも、ひるまない。 「現地の人に美味しいと感じてもらえるものを出す。それは日本人の『おもてなしの心』なんです。」 一方、京都の老舗料亭の料理人たちは、こう言う。 「『うまみ』の概念など日本独自のもの、日本の伝統・文化を正しく伝えるためには、和食そのものを伝えなければ。」 この2つの考え方は、両方正しいし、どちらがより正しいとかそういう問題でもない。 どちらも等しく正しい。 要は、料理に対する志の問題。 「おもてなしのこころ」を持っていれば、いくら在庫が多くても古くなって味に影響が出る素材は使わない。 国の文化・伝統への敬意があれば、それもまた同じこと。 料理の世界に限らず、そんな志を持っている人は幸せだろう。 そんな人の周りには、たくさんいい人が集まってくる。 京都の老舗料亭の一団がフランスに技術を伝えにいったときの様子も映された。 集まったフランス料理のシェフたちは、真剣にノートを取り、興味津々のまなざしで包丁捌きを見つめ、感心した表情で料理を味わっていた。 「ノブ」の試食会でも、みんな初めての味や食感に感心していた。 一流の仕事をしている人は、たとえ考え方は違っていたとしても、 みんな、それぞれの志を持っている。 だから成功する。

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