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  • 執筆者の写真Akio Sashima

第79回 NO!と言える人間


秘書時代、ボスについて東北地方に出張に行ったときのこと。 交渉相手の怖い人たちと、蕎麦屋に入った。 ボスと相手グループは奥の席、私と先輩秘書は手前の席。 「ここに来たら、蕎麦と掻き揚げを食うんだべ」 有無を言わさず注文され出てきたのは、大盛りの蕎麦と手の平ぐらいの大きさの掻き揚げ。 結構美味い!と思いながら食べていたら、 「おい若いの、これやるからよ」 4枚も巨大掻き揚げが向こうの席からまわって来た。 そして先輩秘書がぼそっと一言。 「お前、残せないの、わかってるよな」 残すと失礼に当たるぐらいはわかりつつ、 伊良部そっくりの巨体の先輩が3枚は食ってくれるだろうと思っていたら 「俺、ダイエット中だから、よろしく」 「・・・」 一枚でも満腹なのに、あと3枚も食えるわけない・・・。 でも残すわけにもいかない。 必死に食べていたら 「おい、行くぞ。・・・お前、何枚食ってんだ?食いしん坊だな」 ボスも薄情・・・。 でもNOと言えない辛さは、ボスも先輩秘書も若いときに経験済みなことは 耳にたこができるほど聞いている。 だから文句は言えない。 しかし、殴られるのを覚悟でNOと言わなければいけないときはある。 交渉も無事終わり、帰途につこうとしたとき ボスが怖いことを言った。 「おい佐島、あの親分が『いい若いの連れてるな。うちにくれよ』だってよ。残れ!」 「いえ、遠慮しておきます!」 間髪いれず答えたら、側にいた下っ端の怖い人がすかさず 「なんでー、もったいない。俺だったら、即決で残るな」 お前と一緒にするな。 ボスが黒といったら、白いものでも黒になる。 この世の中には、そんな世界がいくらでも存在する。 でも、そんな世界にいても、NO!と言える勇気は必要。 じゃないと人生が狂う。

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