むかしサラリーマン時代に出会った変わった人の話。 その人はフリーでずっと日本全国を転々としながら仕事をしていて、 ある意味それを自慢げに話していた。 「私は日本全国で仕事をしてきた」と。 聞けば、20回以上も引越しを繰り返していた。 それだけ引越ししながらも仕事が出来るんだから、凄いと言えばすごい。 でもしばらくすると可哀想になってきた。 話を聞いていると、それが自ら望んできたことではなく、 ただ単に仕事相手と長続きしないから しょうがなく転々としていただけだということが薄々わかってしまったからだ。 仕事は出来るのに、性格というか人間性に問題がある。 「私はクライアントとは長く付き合わないんだ。長くてせいぜい2年だな」 とか言っても、それはただ単に「切られて」いるだけ・・・。 その事実はたぶん本人が一番良くわかってるはずなのに、 それを絶対に認めようとはしない。 それが逆に哀れに思えた。 結局その人は、そのとき私がいた会社とも酷い喧嘩別れだった。 なにしろ社内で大声を出したり、棚などを蹴ったりして怒っていた。 いい年したオッサンがである。 はっきり言って「ミットモナイ」としか思えない感じで、 「こういう人間だけにはなりたくないな」と思ったものだ。 ちなみにこの話は、ここ最近威勢のいいナントカ・ファンドを見ていて思い出した話。 株を買って株主になったばかりなのに、偉そうに注文をつけている。 何を勘違いしているんだろうかと哀れに思える。 筋論で言えば、 経営者にとっては事業を興すときに出資してくれた投資家には頭が上がらない。 でも、通常の株取引でいきなり大株主になられても、経営者にしてみれば ただ単に株主の名前が変わっただけの話だ。 「株主資本主義の世界ではそんな話は通らない」 と言うかもしれないが、それはやはり筋が通らない。 どんな世界でも、長く付き合うという姿勢は基本にあるべきだ。 人間を無視して金儲けがしたいのなら、パチンコでもしてればいい。 長く付き合えるのか、付き合えないのか、 付き合わないのか、付き合ってもらえないのか。 それが自分に理由があるのか、相手に理由があるのか。 それは自分から逃げていると、見えてこない。
Akio Sashima